当科ではCPC (Clinico-pathological conference) をはじめとして、臨床各科とのカンファレンスを年100回以上開催し、診断精度の向上に努めています。標本作製過程での検体間違いの防止策などにも積極的に取り組んでおり、病院機能評価でS評価を受けています。
病理診断科は、各診療科で体のいろいろな部位から採取された細胞や組織、手術で切除された臓器を顕微鏡で観察し、病気の種類や進行度などを詳しく診断しています。現在、日本人の2人に1人が一生のうちに一度「がん」に罹り、3人に1人が「がん」で亡くなると言われていますが、「がん」の最終診断をするのが病理診断科の役割です。
「がん」の診断には血液中の腫瘍マーカーを検出する方法や、CTやMRIで体の中の画像を映し出して診断する方法がありますが、病理診断科では病気になった体の部分から採取された細胞、組織の一部や手術で切除された臓器を顕微鏡で詳しく調べて、病理医が病気の種類や進行度などを診断しています。また、「がん」以外の炎症や変性疾患などの診断も行っています。
病理診断科の業務は、病理組織診断、術中迅速診断、細胞診断、病理解剖の4つからなります。5人(病理専門医1人、細胞検査士4人)のスタッフで、年間約3,000件の病理組織診断、3,000件の細胞診断、約10名の方の病理解剖を行なっています。
病理医は患者さんに直接会って診療することはありませんが、主治医を介して病理診断の内容を伝えさせていただいています。2008年4月より、病理診断科として標榜されましたので直接患者さんを診療することが可能になりました。病理診断について直接お聞きになりたい方や病気の顕微鏡像を直接見てみたい方は、セカンドオピニオン外来に申し込んでいただければ、病理医が病理診断の内容や顕微鏡像をわかりやすく説明いたします。
皮膚や胃粘膜など体の一部を小さく切り取って、悪性の病気か良性の病気かを診断します。また、手術で摘出された臓器を細かく切り出して、組織型や進行度を調べます。病理組織診断に基づいて、治療が行われます。
術中迅速診断では、手術中に提出された組織の一部を急速に凍らせ、薄く切って標本を作製し、10分程度で組織診断し、臨床医にその結果を伝えます。術中迅速病理診断は「がん」の手術には必須で、当院のように病理医が常勤している施設でないとできません。
子宮がん検診などのようにからだの一部の細胞をブラシで擦って採取し、あるいは痰や尿などから細胞を集め、異常な細胞がないか調べます。「乳がん」や「甲状腺がん」のように「しこり」を検査するときは、注射器で吸引して細胞を採取し、悪性細胞の有無を判定します。生検より体にやさしい診断法です。細胞診で異常が認められると、次の段階である生検が施行され、病理組織診断が行われます。
ご不幸にしてお亡くなりになられたとき、診断、治療は正しかったのか、治療効果はどの程度あったのかなどを調べ、今後の診断・治療に反映させるために行われるのが病理解剖です。
生検、手術で摘出した臓器、細胞診検体を提出
病理組織診断報告書(病理診断)
臨床各科の医師が病理組織診断を必要と判断した場合は、生検、あるいは手術によって臓器の一部を摘出し、病理診断科に提出します。
病理診断科ではそれらの臓器から標本を作製し、病理医が病理診断します。病理医は病理組織診断報告書を発行し、臨床医に届けます。病理診断のための基本的標本はヘマトキシリン・エオジン染色標本ですが、特殊染色や免疫染色、電子顕微鏡を用いた検索なども必要に応じて施行しています。
近年、がんの分子標識薬治療が行われるようになっており、目的の遺伝子が産生するタンパク質やその遺伝子増幅の有無を調べ、薬の効果があるかどうかも調べています。細胞診断用に提出された腹水、胸水、あるいは経内視鏡的に採取された微量の検体なども組織作製を行い、免疫組織化学染色でマーカーを検索し、病理診断を行っています。
当院は電子カルテが導入されているので、病理診断報告書のみでなく、肉眼像、顕微鏡像などの画像も報告しています。各科の医師は診断報告を診察室の電子カルテ端末で見て、その内容を患者さんに説明します。