心臓カテーテル検査は左心系の検査と右心系の検査があります。左心系の検査は太さが2~3mmの専用の細い管(カテーテル)を手首や肘、足の付け根の動脈から心臓の冠動脈の入り口まで持って行き、造影剤を注入することで冠動脈の画像を撮影し、狭窄の有無や動脈硬化などの異常を診断する検査です。右心系の検査は、首や足の付け根の静脈からカテーテルを挿入し、心臓や肺動脈の圧力測定を行うことで、心臓の動きや心臓の負荷を観察する検査を行います。冠動脈に狭窄があれば冠動脈に特殊な風船やステント付きの風船を挿入して拡張し血管を広げる治療が行われます。臨床工学技士は、検査治療で使用する心電図を観察したり心臓の中の圧力を測定したりできるポリグラフという機器や、冠動脈の中に2mmほどの超音波プローブを入れることで冠動脈内の超音波画像を表示させる血管内超音波装置(IVUS)、動脈硬化を起こした冠動脈内にダイヤモンド粒子が先端に埋め込まれた細いドリルを高速回転させて削るローターブレーターなど多くの周辺機器を操作しています。
臨床工学技士は、12誘導心電図や血圧、SpO2(動脈血酸素飽和度)の観察、心臓内の圧力の測定・記録、治療中の心電図変化や脈・血圧の変化などの観察と医師への報告、緊急時の対応を行っています。脈が遅くなった場合は体外式ペースメーカを挿入して脈を確保するため、体外式ペースメーカを操作します。血圧が下がった場合は、大動脈に特殊な風船を入れ心臓の動きに合わせて拡張、収縮させるIABP(大動脈内バルーンパンピング)や、足の付け根の動脈と静脈に太さが6mm~8mmのカテーテルを入れて静脈から血液を体外へ取り出し、遠心ポンプと人工肺を使って体外循環とガス交換を行い動脈へ血液を返すECMO(体外式膜型人工肺=PCPS:経皮的心肺補助)を使用して血圧、脈、酸素化を確保します。この2つの装置は補助循環装置と呼ばれ、緊急時は早急な対応が必要となりますが、現在は3名の臨床工学技士が準備、セットアップと操作の対応を行っていますが、更に3名の臨床工学技士を対応できるように教育指導中です。また、治療中に急に起こる不整脈に対して除細動器を使用するため、安全に使用できるように日常点検をしています。その他、血管造影室へ人工呼吸器を1台常備し、日常点検を行うことで呼吸状態が悪くなった場合でも安心して使用できる環境を作っています。
肺高血圧の治療の1つにバルーン肺動脈形成術があります。たくさん枝分かれしている肺動脈が細くなり、血流が流れにくくなったため心臓に負荷がかかり心不全になっている患者さんが対象で、特殊な風船を使用して細くなっている血管を広げる治療です。臨床工学技士は、心電図や血圧、SpO2の観察、心臓内の圧力測定・記録などを行っています。緊急時は人工呼吸器を使用する可能性があり、迅速に対応できるように準備しています。