心臓の手術や心臓に近い大動脈の手術を行う場合は、手術を安全に行うために心臓と肺の機能を一時的に停止させる必要があります。その時に心臓や肺に代わる働きをする体外循環装置(人工心肺装置)を使用することで手術を安全に実施しています。臨床工学技士は、人工心肺装置を操作し、心臓の代わりに全身の血液循環の調整と、肺の代わりにガス交換の調整を行い、電解質や水分バランス等の管理も行っています。また、弓部大動脈解離などで大動脈から頭に血液を送る血管に及ぶ手術を行う場合は、人工心肺装置で心臓と肺の代わりを行う他に、頭と体に血液を送るポンプを分けて実施する脳分離体外循環も実施しています。人工心肺装置の周辺には多いときには十数台もの医療機器が同時に使われますが、医師や看護師と連携を取りながら、安全に手術が行われるように日々業務に取り組んでいます。
手術で使用する人工心肺装置と心筋保護液供給装置の回路の組み立てと、プライミングと呼ばれる回路内にある空気を輸液製剤に置換する作業を行います。このプライミングによって安全に体外循環を実施することができます。準備が終わったら、チェックリストに沿って点検を行っています。当院では、ダブルチェックを行うことで安全性を高めています。他にも手術症例によって、自己血回収装置、超音波ドップラー血流計、高周波焼灼装置、除細動器、体外式ペースメーカなどの準備を行います。
当院では、体外循環技術認定士2名と臨床工学技士1名の計3名で人工心肺操作の他、心筋保護液供給装置や自己血回収装置の操作、人工心肺記録、その他周辺装置の操作を実施しています。手術が終わるまで、血流や血圧、装置が安全に動いているかを常に監視しています。当院の人工心肺システムは、落差脱血・遠心ポンプ送血です。日本体外循環技術医学会が勧告している 「人工心肺の安全装置の設置に関する勧告(第六版)」を遵守しており、安全な人工心肺装置の操作を心掛けています。