手のしびれは日常診療においてよく遭遇する症状です。
しびれの原因は様々ですが、掌側母指から環指橈側にかけてのしびれは手根管症候群である場合が多いです。本疾患は正中神経が何らかの原因で手根管内で絞扼を受け、知覚障害や母指球筋萎縮などを生じ受診されます。原因がはっきりしない特発性が最も多いですが、透析患者さまのアミロイドーシスが原因となることも多くあります。
本疾患の治療方法としては保存的治療(消炎鎮痛薬、ビタミン剤や局所安静など)を第一選択としますが、症状が強い場合や保存的治療が無効であれば手術が選択肢となります。
手術的治療としては従来から行われている手掌を切開して神経を剥離する方法が一般的ですが、当科では奥津法に準じた内視鏡を用いた低侵襲手術(鏡視下手根管開放術:ECTR法)で行っています。
鏡視下手根管開放術は1987年に奥津らが開発、報告したものが始まりで、従来から行われている手掌部皮切による方法やChowらによるtwo portal法と比較してもさらに低侵襲であり、手術時間の短縮や患者さまの早期社会復帰が可能となり、有用な方法と考えています。局所麻酔の手術で、入院の必要はありません。
手指MP関節部の腫脹や圧痛、また指を動かす時の疼痛や弾発現象などの症状がある場合には弾発指の可能性があります。通常はまず保存的治療(外用剤や腱鞘内注射)を行いますが、無効であれば手術を行います。
通常は皮膚を切開して腱鞘を切開しますが、弾発現象が主訴である場合には18G針を用いた経皮腱鞘切開を行うことも可能です。