腎臓内科医長 曽爾 浩太郎
腎臓の主な働きは、尿を作り、体内で代謝され不要となったものを排泄することです。多くの薬剤も腎臓から排泄されるため、腎機能に応じた薬の投与量や投与間隔の調整が必要です。腎機能によっては、使用することすらできない薬剤もあります。つまり、腎臓の働きが悪い腎不全の方は、薬の 種類や量に注意が必要なのです。
代表的な薬剤として、抗菌薬や抗がん剤などは、投与量や投与間隔を厳密に調整されています。他に注意すべき代表的な薬剤として、NSAIDsと呼ばれる鎮痛薬や一部の糖尿病治療薬、経口抗凝固薬、神経障害性疼痛の薬、抗ヘルペスウイルス薬などがありますが、ここにすべてを列挙することはできません。
さて、皆さんの飲んでいる薬は、腎機能に応じて調整されているでしょうか?かかりつけの先生がちゃんとやっているはず...!?それでは、皆さんはご自身の腎機能がどれくらいなのか、ご存知ですか?例えば旅先で、予期せずかかりつけ以外の病院を受診することになった時、ご自身の腎機能を伝えることができるでしょうか?お互い知らなければ、過量の薬を処方されることになってしまうかもしれません。これは腎機能に限らないことですが、ご自身の健康状態について、きちんと把握しておくことが大切です。
ここまで、腎機能低下時に薬剤の選択や投与量に注意する必要性についてお話ししてきましたが、「腎機能が悪かったら、どの薬も怖くて飲めない!」とは思わないで下さい。たしかに腎機能障害の程度によっては、そもそも投与を受けられない薬剤もありますが、一方で腎不全でも全く調整の要らない薬剤も多々あります。適切な薬剤を選択し、適切な投与量に調整すれば、腎機能正常な方と同じような効果を期待できる薬剤がほとんどです。
まずは、ご自身の腎機能検査結果に目を向けてみてください。 ご不明な点は担当医にお尋ねください。
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