診療部長・外科部長 田原 浩
点滴は、水分や栄養の補給ができる大切な治療ですが、点滴中に血管が痛くなったり赤くなったりしたことはありませんか?原因は、点滴液による刺激や感染により「血管炎」を起こしているからです。血管炎が起きたら、針を抜いて別の血管に刺し替えなければなりません。
また、点滴が漏れて腕が腫れた経験をお持ちの方もおられるでしょう。水分補給のための点滴であれば、腫れは短期間で引きますが、抗がん剤の点滴の場合は治りが悪いこともあります。
長期にわたり栄養点滴を行う場合や、点滴による抗がん剤治療を行う場合に、鎖骨下や頸部、上腕、鼡径部の皮膚からカテーテル(管)を挿入して、「中心静脈」と呼ばれる心臓に近い静脈にカテーテル先端を留置することがあります【右下図】。上大静脈などの中心静脈は血流が多いため、投与した点滴液はすぐ薄まり、血管炎は起きにくいのです。しかし、カテーテルを挿入しただけでは、皮膚からカテーテルが出た状態ですので、入浴ができない、入れた場所が感染する、日常生活が不自由といった欠点を伴います。
これらの欠点を補うために、血管内に留置したカテーテルを皮下に埋め込んだ静脈ポートに接続する「静脈ポート留置」が広く行われています【右下図】。皮膚の上から静脈ポートに針を刺すだけで、確実に静脈に点滴をすることができ、しかも針がしっかり固定できるため、治療中もベッドで安静にしなくてもよいのです。静脈ポートは約2000回の穿刺に耐える構造になっています。点滴をしない時は、針を抜いてカテーテル管理から解放されるため【左下図】、入浴も可能です。静脈ポートの欠点には、閉塞や感染などがあります。
点滴の血管確保にお困りの方は、「静脈ポート留置」が適応かもしれません。主治医の先生と相談し、「静脈ポート留置」の必要があると判断されたら、当院外科の「中心静脈ポートセンター」が局所麻酔による「静脈ポート留置」を担当します。
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