泌尿器科部長 安東 栄一
特に女性に多いのが以下の疾患です。
骨盤臓器脱(膀胱瘤、子宮脱、直腸瘤など):骨盤内の臓器が正常な位置から下がり、膣を通じて外に出てしまう状態です。(図1) 症状として、股に何かが挟まっているような感覚、下腹部の圧迫感、排尿や排便の困難など。
尿失禁(腹圧性尿失禁、切迫性尿失禁など):咳やくしゃみをしたときに尿が漏れる、または急に尿意を感じて我慢できない状態。
膀胱炎:頻尿や排尿時の痛み、血尿を伴うことがあります。
過活動膀胱:急な強い尿意を感じ、トイレに行く回数が増える状態です。
(図1)
骨盤臓器脱の治療法
保存療法・骨盤底筋トレーニング
・ペッサリー(骨盤内の臓器の脱出を防ぐ器具)
手術療法・ロボット支援腹腔鏡下仙骨膣固定術(図2)
仙骨と膣を医療用メッシュで固定し、 臓器を正常な位置に戻します。
内視鏡とロボット技術を活用することで精密で高度な手術が可能となり、術後早期の回復が期待できます。入院期間は約1週間です。
(図2)
尿失禁の治療法
保存療法・骨盤底筋トレーニング
薬物療法・尿失禁や過活動膀胱に対して膀胱の収縮を抑える薬を使用。
手術療法・中部尿道スリング手術(TVT,TOT)(図3)
腹圧性尿失禁に対する手術では、医療用メッシュテープを尿道真下に挿入し尿道の不安定を解消します。小さな切開で済み、短時間で終了します。
入院期間は4-5日間です。
(図3)
当院の診療実績
手術名 | 2023年 | 2024年 |
---|---|---|
仙骨膣固定術(ロボット支援含む) | 8件 | 63件 |
中部尿道スリング手術 (TVT,TOT) | 2件 | 10件 |
骨盤底筋を鍛える:骨盤底筋トレーニングで骨盤底筋がゆるまないよう強化し、ウオーキング・ヨガなど適度な運動を取り入れ全身の健康を保ちましょう。
体重管理を行う:適正体重を維持することで、骨盤底への負担や尿もれのリスクを軽減できます。
便秘を防ぐ:トイレでいきむ習慣があると骨盤底筋に負担がかかります。食物繊維や水分を十分に摂取し、規則正しい排便習慣を心がけましょう。
最後に
女性泌尿器疾患は日常生活に支障をきたすことも多く、適切な予防や早期治療により生活の質(QOL)を改善することが期待できます。出産や加齢による身体の変化は自然な現象ですが、症状が進行する前に治療を行うことが、快適な生活を取り戻すための重要なポイントです。お困りことがございましたら、泌尿器科に一度ご相談ください。
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